復元の生物学 その3

 

どのような植生を復元するか?

保全事業ではなく、復元事業が行われている場合、すでに本来の自然環境は大きく壊されている。都市環境がその例である。都市環境にその土地本来の植生を復元することは、どこまで可能なのであろうか?

 

  • 都市環境の中に、都市周辺に、森が少なからず残されている。また、開発が進んだ場所でも、土壌中のシードバンクが残されている可能性がある。

→これらの供給源に基づく、その土地本来の森林の復元は十分に可能である。

→森林再生事業は、「風土性の原則」にのっとって、その土地に自生する植物を使って行われるべきである。

 

  • 森林の復元に関しては、土地利用を放棄するだけで、やがて森が発達すると期待して良い。

ex. チェコスロバキアの植生遷移の研究より(Parch & Pysek, 2001)

ex. カリブ海プエルトリコ島の植生遷移より(Aideら,2000)

 

  • 人為的措置として、例えばシイ・カシ類のように分散力の小さい植物の苗を、近郊の林から採集した種子より育てて植える。

→復元までの時間を短縮するための、限定的な作業を行うのが妥当である。

ゆえに、これまでの公共事業のように大型の予算を短期間に投入するよりも、小規模の予算を長期にわたって投入する方が多くの場合に好ましい結果を生むと考えられる。

 

  • 一方で、絶滅危惧種の中には、農耕地、草原、雑木林など人間の農業活動により二次的な自然に生育するものが数少なくない。森を復元さえすればよいと考えるのは早計であり、復元すべき植生をを考えるためには、過去にどのような植生を失ってきたのかを知ることが必要である。

 

  • 恒川(2001)によれば、1850年から1985年の135年の間に、国土の都市的利用は3.53倍に増加しているが、森林や農地の面積はほとんど変化していない(図1)。減少が大きいのが、荒地と湿地である。

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  •  横張・栗田(2001)もまた、埼玉県比企丘陵での土地利用変化を分析し、柴地や茅場の消失が著しいことを指摘している。
  • 草原性の絶滅危惧種が集中する阿蘇地方では、採草地が植林に変わり、絶滅危惧植物の自生地が消失している。

→野焼きや採草によって草原を維持しても補助金は得られないが、植林をすれば補助金が支払われるという制度があるからである。これらの事実は、絶滅危惧植物が、草地や湿地に多いという、維管束レッドデータブック環境庁,2000)が明らかにした事実と符合する。

 

これらの点を踏まえると、自然再生事業において優先されるべきは、草地や、草地と湿地が隣接した水辺環境の復元なのである。