復元の生物学 その2

復元の三原則

保全と復元の生物学(2002)種生物学会編」の中でも、タイトルに「復元」がつくからには、この項の内容については結構重要でないかと個人的に思った。一般市民も含めてである。間違った認識で「〜〜の自然を取り戻そう!!」などど活動が行われたら、とんちんかんでめちゃくちゃな自然の再生・復元?が行われるのではないだろうか?

 

風土性の原則

「自然の復元・再生を計画するとき、我々が目標にすべきことは、その土地に生活し、その土地の環境に適応し、その土地の歴史とともに進化してきた、固有の生態系を復元することである。」

 

・種の分類は人間が決めたもので、生物多様性の一部を表現しているに過ぎない。

→これについては、本著を読んでから痛感したところである。種、種と捉え、そしてとらわれていたが、実際のところある生物を種だけでひとくくりにできるほど、生き物たちの営みは単純ではなかった!!

・同じ種とされても、地方によって異なる系統に分かれているのが一般的である。

・よって、守るべきは「種」ではなく、その土地に固有な系統なのである。

(これらの点から考えると、現在のトキの野生復帰事業に関して、果たしてどう捉えたらよいのだろう…?)

 

多様性の原則

「特定の種だけに着目した復元ではなく、その土地の歴史とともに進化してきた多様な種からなる生態系全体を復元する必要がある。」

相互依存の関係

・Loreau&Hector(2001)*は、進化生物学で使われるPriceの公式を応用して、群落内の植物種数と群落の生産量の関係を実験的に調べた結果を解析した。

・Priceの公式を利用して、競争の効果と共助の効果を分割すると、競争の効果は定まった傾向を示さないが、共助の効果については一貫して有意な傾向がみられた。すなわち、同じ場所に生育している植物どうしは相手の性質を利用して、生産力を高めていることが多い。

 

 自然再生事業において、このような相互依存関係を復元することが必要とされる。

 

*Loreau, M. & A. Hector. 2001.  Restoration biology: A population biology perspective. Restraion Ecology 5: 277-290.

 

変異性の原則

「種内の遺伝的変異が保たれるように、十分な注意を払う必要がある。」

 

Montalvoら(2001)*?は、復元事業の目標として、「集団がランドスケープ(地形や植生配置)の動的な変化を通じて長期間存続し、適応的な進化を続ける能力を保証するレベルまで、集団を復元すること」を挙げている。

 

つまり、その土地固有の系統からなる生物の集団が、将来の環境変化のもとで新しい進化の歴史を紡いでいく能力を保証することを復元の目標にあげている。

 

このような適応進化能力は、集団内の遺伝的な変位量によって左右され、したがって自然の復元にあたっては種内に変位性が保たれた生態系を目標にする必要がある。

 

*Using spontaneous succession forrestoration of human-disturbed habitats: Experiment from Central Europe. Ecological Engineering 17:55-62.