読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

水草のはなし その2

繁殖様式と遺伝的多様性

 同じクローンからなる集団が、特定の病原菌に冒された場合や、長期間の環境変動にどのように対応するのだろうか。

 コカナダモ Elodea nuttallii 例を取り上げると、彼らは北米産の帰化植物であり、雄株しか日本に入っておらず、琵琶湖産のコアユの放流に付いて全国に分布を広げたと考えられている。尾瀬沼でも、一時異常繁殖をして問題になったが、やがて群落は衰退する例が多いのである。この、コカナダモの盛衰は、同一クローンによる病原菌に対する耐性のなさが一因でないかと考えられている(角野, 1997;Kadono et al., 1997)。そして、同じことは在来種でも起こりうることである。

 

 コカナダモ と対照的な例として、兵庫県加古川水系におけるクロモ Hydrilla verticillataの遺伝的多様性を調べた例が挙げられる(Nakamura & Kadono, 2000)。クロモには、雌雄同株と雌雄異株の2系統があり、さらに後者には染色体数で二倍体と三倍体が存在する。

 加古川水系には、これらの全てが出現し、さらに三倍体系統は酵素多型の解析の結果から少なくとも7タイプの遺伝子型に分類された。これらの分布は特徴的であり、川の流れによって一様に分布しているのではなく、上流部や特定の支流にしか分布しない型が存在した。

 この特徴的な分布に関して、どのような生態的分化が起こっているかについては今後の課題である。このことより加古川のクロモの保全について言えば、一部の場所に残ればよいということではなく、遺伝的多様性を含めて水系全体に目を配った保全の必要性が明らかになった研究であった。

水草のはなし

水生植物の危機的状況

日本の汽水域、淡水域には、帰化種を除いて約200種の水草が分布するそうである。ここでいう水草は、狭義の水草であり水域を主たる生育環境とするものを指す。

 

植物版レッドデータブックRDB)(1989)によれば、その種数の約25%に相当する47種がリストアップされている。さらにその後の環境庁RDB(2000)では、87種もの水草がリストアップされている。こんなに多くの種がリストアップされているなんてまったく知りもしなかった。

 

水草は、その生育形によって次の4タイプに分けることができ

・沈水植物(絶滅危惧種の割合は59.7%)

・浮葉植物(同51.5%)

抽水植物(同27.5%)

・浮遊植物

が挙げられる。

 

水草が減少する要因

・水域の埋め立てや干拓によって水域そのものが消滅すること。

・水域は残っても、護岸の改修などによって水辺の移行帯(推移帯)を生育場所とする種の生育を不可能にすること。

・また過剰な利水による渇水や不自然な水位変動も水草の生活史に影響を与える。

 

保全生物学の課題

生活史特性の研究

日本に分布する水草は約200種ということであるが、それらについて正確な分布、生育環境、生活史特性などの基礎的情報が集まっている種というのは限定的である。まだまだ基礎的な情報に関わる研究は足りない状態である。

 

ごく近縁種であるのに、一方が比較的多産であり、もう一方が極めて稀という例がある。ヒルムシロ属のホソバミズヒキモは各地に産する一方、コバノヒルムシロの産地はごく限られる。その姿形はそっくりであり、どのような生態的差異が普通種と稀産種に分けたのかは、未解明なのである。

 

水草たちが生活史を形成する上で、どのような環境が必要であるのか…?これについて地道な研究を積み重ねていく必要があるようである。 生物保全のためには、やはりどう守っていくかの根底には多くの基礎研究が必要不可欠、生活史、生態などメカニズム解明の研究なんかでも十分楽しめそうである。

 

 

参考:保全と復元の生物学 野生生物を救う科学的思考 種生物学会編(2002) 

保全生態学へ

f:id:yankoko:20170419213557j:plain

野生生物の保全外来生物の問題など、自己学習のためのメモ

試行錯誤しながらまとめて、知見を深めていこうと思います。

学生時代のゼミ資料みたいにまとめるけれど、非常にへたくそです。

一面の菜の花畑は、上堰潟公園にて。